ウィルカルが
ヨルグナに侵食され転がる中
嵐の如き大群でアシュナスを襲う
小さな化け物どもに構うことなく、
アシュナスは歩み続けた。

アシュナスは
怒りに満ちた表情で、
タラトットに向かって言葉を投げた。

「お前達は
目の前の者全てを淵入りにするか
命を奪うまでは決して去りはしない。

こちらの都合はお構いなしだ。」

アシュナスは既に、
化け物の低き顔に
斬撃を浴びせることが出来る距離まで
近づいていた。
「ここから
生きて去るのは
お前か俺か
確かめてやる」  
とアシュナスは告げた。

次の瞬間
タラトットの幹の先端が
鋭利になり始めた。

化け物の幹は巨大で
鋭利な先端でアシュナスの
胸を貫いた。

アシュナスから血が流れることはなかった。

痛みも無かった。

胸を貫かれたアシュナスは
化け物に告げた。

「お前の巨大なその三つ葉は
見た者を惑わせるのだろう。

だが…

見破られた幻影ほど
無力なものは無いな。」

その地には
炎に包まれたフディアトも
どこかに落ちるフディアトもいなかった。

地面に落ち散らばる
数千の小さな化け物も存在せず
アシュナスを貫く
鋭利な先端も存在しないどころか
見上げるほどの高き幹さえ無かった。

アシュナスには
爪の如きや牙の如きに受けた傷も
貫かれた箇所も何もなかった。

だがその地にも残されたものが
あった。

ヨルグナに侵食され
転がる無数のフディアト達。

ウィルカルとアシュナスが切り捨てた
僅か数十匹の小さな化け物どもの残骸。

そしてアシュナスを庇った意志が伺える
ヨルグナに侵食され地に伏すウィルカル。

アシュナスの眼前にある
化け物にあったものは、
房の如きが僅かに一つ。
そして低き顔の如きと傍らに種。
 

それが高き幹と無数の房を備え
何千という小さな化け物を
解き放つタラトットの正体であった。

アシュナスは
そのままタラトットを
刻んで刻みぬき、
渾身の怒りで種を砕き割った。

種からいつものように
無数の光が生じ
アシュナスの顔を明るく照らした。

賢者キトは
次々に棺人形に
フディアト達を
回収させた。

いつものように軽口を叩いていたが
アシュナスには何の言葉も届かなかった。

アシュナスは
ウィルカルと過ごした
僅かな一時と
ウィルカルにかけられた言葉を
思い出した。

差し出された焼きの実を。

アシュナスの意識にまたもや
キアンディナが浮かぶ。

だが今そこに、
アシュナスの周りにあるのは
大岩船で運ばれ行く
棺人形に入った物言わぬ者達だけであった。