アシュナスは十日に一度、
自らの意志で自身を清めるために
白き鉱山たる水山に向かう。
さらに慣わしに従い、
青き蛇月の夜と
タラトット狩りの後にも水山へ向かう。
この度、アシュナスが水山へ向かったのは
タラトット狩りの後であったためである。
タラトット狩りは、
禮(れい)であると同時に、
穢(けが)れであるとも村人達に
捉えられている。
ゆえにエニファル村の慣わしでは、
狩りから帰還したフディアトは、
身を浄めるため、
水山の滝に打たれなければ
ならなかった。
滝は川の先にあり、
滝の落ちる場所は
滝行の地となっていた。
アシュナスは滝の近くの岩場で
礼装を脱ぎ、たたみ
岩の上に一式を置いた後、
滝に向き直り一禮をした。
そして目と口を閉じ、
石や岩、鉱石のひしめく
足場の感覚だけを頼りに、
一歩ずつ進み、
やがて滝へと身を入れた。
激しい滝がアシュナスを打ち据えた。
轟音と刺すような冷気。
それは今のアシュナスにとって、
雑念を削ぎ落とす良薬であった。
目と口を閉じるこの所作は、
水に含まれるとされる
極小微細な鉱粉を
飲まぬようにするための
慣わしであるとされる。
この鉱粉は強力な浄化作用を持つが、
その力ゆえに、
長く身を晒せば体を摩耗させると
恐れられてきた。
その言い伝えゆえに滝行は、
ごく僅かな時間に限られている。
実際に水山の滝が身体に
悪影響があるかは定かではない。
むしろ、確実なことは
この白き鉱山を流れる川の水には
ヨルグナを浄化する力があった。
故にその落水でもって
身を清める行為が浄化の慣わしとなるのは
極めて自然なことでもあった。
滝行を終えたアシュナスは
布で全身を拭き、
禮装を着た。
そして次に川に向かった。