紅い髪の少女は
「なんだ?気にしてんのか?
髪色なんて。
父さん譲りの
あたしの癖っ毛よりはマシだろ?」 
と言った。

少年は
「灰は…無意味だから。」
と力なく答えた。
少年の目はさらに光を失い始めた。

「無意味な存在価値の無い燃えカスの色…。
灰捨て場の色…。」

「灰が意味無いって!?」
少女は驚いた様子を見せた。

「もしかして、あの村じゃ
灰は捨てちまうのかい!?」
と少女は少年に尋ねた。

少年は頷いた。

「あんたさぁ、
畑の飯種にたかる毒葉蟲(どくはむし)を
灰で追い払えるの知らないの?」

少年は少女を見つめた。

「なんならオバケや
ユーレイのたぐいだって
追い払えるって噂だよ!
だけどさぁ!
あたしが一番言いたいのはこれ!!
ほら!!」

少女は焚き火の中から
赤く焼けた実を
火ばさみで取り出した。

「焼きの実!
灰が無いと丸焦げに
なっちまう!」

その焼きの実は
まさに灰の下に埋められ
温められたものであった。

「無意味だって!?

ふざけたこと
言ってんじゃないよ!

あたしにとっちゃ
灰は無くてはならないもんだよ!」

と少女はニッカリと少年に言い放った。

少年の目に僅かに光が宿った。

「ここに来る途中、
石ころを並べてる場所を見たかい?」

灰色髪の少年は頷いた。

「石ころ遊びかと思って、
あたしも石ころ並べて遊んでたら
父さんにこっぴどく叱られてね。」

「あれは、お墓みたいなもんなのさ。
村人があの世にいっちまったら
石ころを一つ置くんだ。

それから手を合わせる。

一つは一人分。

十たまったら、
中くらいのを置いて、
中くらいのが十個になったら
でかい石を置くんだ。」

「知らなかったよ。
ただの石ころに
そんな意味があるなんてさ…」

「…あたしは難しいことは
分かんないけどさ、
この世に、
今あるものには全部…

なんか意味があるんじゃないのかな」

と紅い髪の少女は
灰色髪の少年に告げた。

少年の脳裏に自らを無価値だと信じ込ませた
呪いの言葉の数々が浮かんだ。

だが、
紅い髪の少女にかけられた言葉の余韻は
数々の忌まわしい言葉よりも強く
少年の内に残った。

少年の目から
大粒の涙が溢れていた。

それを見た少女は
焦りながら叫んだ
「げ!そんなに髪色気にしてたのかよ
ごめんよ!」

「…けどさ。
本当に驚いたよ。

あたしを
あの酒場の酔っぱらいから
かばってくれた時の
あんたさ…

物凄い迫力だった。

あの瞬間だけは
本気で怒った時の
父さん超えてたよ…。

あんた、きっと強くなるよ。

父さんがあんたを弟子にした理由は
慣わしのためだけじゃない。
あたしには分かるんだ。

あんたはきっと…

すごいフディアトになるよ!!
あたしが保証する!! 」

そして少女は
少年にこう告げた。

「そうだ…!あたしまだ
あんたに名前言ってなかったよね!

あたしの名前は

キアンディナ!」