タラトットの種を割り、
最後の光を見たアシュナスは
違和感と共にある光景を見た。
いつもの
タラトットの最後の光は
ただの無数の光である。
天に昇りながら消える光。
アシュナスの眼前までも届かず消える光。
種より出(いで)ては瞬時に消える光。
軌道、方向、光を放つ長さなどに
差はあれど、どれもやがて消え去る、
見つめても目を焼かれることの無い
弱々しい束の間の無数の光。
だがその日、その刻。
アシュナスは砕いたタラトットの
種から立ち現れた光の中に、
見慣れぬ光景を見た。
タラトットの最後の光の
一つ一つは
片手で掴めそうなほど小さな光である。
アシュナスはその内の一つの光が
気になり、その光を見た。
その光の中の光景に、
小さな起点が生じた。
それはアシュナスには命に見えた。
生まれた命は『先』へと向かった。
その命は次に少し
大きな命に変わり、
そして次第に分岐し、
先へと進みながら新たな命となった。
単純な形をしていた命は
手や足やはっきりとした顔を
備え始めた。
先に行けばいくほど、
命は人のように見えた。
いやあれは確かに『人』なのだろう。
アシュナスはそう感じとった。
アシュナスには
小さな光の内に見ていたはずの
その光景が、いつしか視界の全てを
埋め尽くすほどに感じられた。
それはまるで
自らが光の中へと入り込み、
その光景を眺めているかのような
感覚であった。
命は様々な形に姿を変え続けた。
やがて命の一つが巨大な姿となった。
その命は象のようでもあり、
魚のようでもある
不可思議な姿をしていた。
その体躯は雄大であった。
巨大なその命は
命の流れを知覚しているかのように
アシュナスには思えた。
瞳は澄んでおり、
その眼差しはまるで
無限の時間と空間を
見渡しているかのように
アシュナスに感じさせた。
アシュナスは
その巨大な命の目を見ていた。
そして、
巨大なその命もまた
アシュナスの瞳を見た。
気がつくと、アシュナスの
意識はいつもの日常、
狩りの地に戻っていた。
消えゆく無数の
タラトットの最後の光の中には
もう何も見てとることは出来なかった。
それは、いつもの儚い光だった。
アシュナスにとって見慣れた、
砕いたタラトットの種から現れる
ありふれた光でしかなかった。
大地にはアシュナスの
切り刻んだタラトットの
蔓の如き鱗肢(りんし)が散乱し、
砕かれた種の破片が
散らばっていた。
ヨルグナはそこかしこに
撒き散らされていた。
だが
それも束の間のことであり、
やがてヨルグナも蔓も破片も
霧となって消えた。
種を砕かれた
タラトットが辿る
ありふれた運命であった。
足音がした。複数の足音だ。
アシュナスは音の方に振り向いた。
「おつかれー。アシュナス。」
翡翠のような髪色に
菱形のような額の模様。
半眼でボロ布を纏っている男が
アシュナスに向かって来た。
男は二体の『棺人形(ひつぎにんぎょう)』
を従えている。
その男の名は
キト・レイヤルト。
このあたり一帯の
フディアト達の統括者たる
“賢者”キトであった。