「なぜキアンディナを
タラトット狩りに
向かわせたのですか?」

深く怒りに満ちた赤い瞳で
師を見下ろしながら
アシュナスは尋ねた。

震える手はまさに、
『自在器たるフディア』を
振り下さんばかりであった。

アシュナスの師である
ゼイゴウは、
静かにアシュナスを見た。

ゼイゴウが
膝をついているのは
頭(こうべ)を垂れるためでも
謝罪のためでもない。

今しがた、
祈りを終えたばかりだったからだ。

ゼイゴウは表情一つ変えずに
アシュナスにこう告げた。

「慣わしは全てに勝る」

ゼイゴウは、
もはや往年の力を持たない。
身体の欠損により、
狩りの地で『フディアト』としての力を
発揮することはできなくなっていた。

今のゼイゴウには、
自在器たるフディアを操る力は
ほとんど残されておらず、
もはや戦いの場に立つことはできなかった。

かつてゼイゴウは、
比類なき強者であった。

畏怖の対象でもあり、
卓越したフディアトとして名を馳せ、
その眼光ひとつで
対象を怯ませるほどの威圧感を持っていた。

その風格は今なお、
かつての威厳の名残を
見る者に感じさせた。

幼きアシュナスもまた、
その眼力に射すくめられ、
血の滲むような鍛錬を課されてきた。

尋常ならざる教えの数々は、
アシュナスの肉体だけでなく
魂にすら刻まれるほどであった。

ゼイゴウはアシュナスにとって、
自在者たるフディアトとしての
道を拓いた恩師であると同時に、
厳しく冷徹な鞭の如き存在でもあった。

アシュナスの中に、
ゼイゴウに対する様々な感情が、
思考が、想いが渦巻いた。

だがそのうえで、

それらの一切が
今のアシュナスには
どうでもよかった。

強さも、
過去の恐れも、
恩義も、
今はただ、
激しい怒りの中に溶けて消えていた。

なぜなら、

キアンディナは
『棺』に入っているのだから。