「あんた。名前は?」
みんなからは
「捨て灰」って呼ばれてる。
少年はしばらく間を置き、
言葉を続けた。
「だけどそれは…名前じゃない。」
ヒャルセオの言葉が通り過ぎる。
「お前みたいな無価値な存在がいて
良かった。俺のクソみたいな
人生がちったぁマシに思える。」
キアンディナはしばらく、
捨て灰と呼ばれた少年を見つめた。
キアンディナの視線は、
少年の瞳を超えた場所を見ていた。
とても高く、また深い場所。
それでいて中心のような場所を。
少年にはキアンディナが
不可思議で懐かしい場所を
見ているように思えた。
そしてキアンディナは
改めて
捨て灰と呼ばれた少年を見つめた。
そして突然、何かを確信したように
言葉を告げた。
「アシュナス」
少年はその言葉を聞いた瞬間、
力のような感覚を感じた。
はるか以前から存在し、
自らに与えられた原初の力の感覚を。
「それがあんたの名前だよ。」
「あたしが決めたんじゃないよ。
見つけたのさ。きっとそうなんだよ。」
キアンディナの瞳の奥は
静かに輝いていた。
「何か…その名前の響きには
溢れるような力を感じるんだ。」
とキアンディナは続けた。
「なんだろうね。
とにかく。あたしには分かるんだ。」
「あんたの名前はアシュナスだよ。」
星々の如き煌めきの
行き交う場所で
特別な席からアシュナスは
アシュナスとなった瞬間の
かつて捨て灰と呼ばれた少年を
眺めていた。
「あの時、お前に命をもらったんだ。
この命…お前のために使うと
決めていたのに。」
「先に行くな…キアンディナ」
とアシュナスは言葉を発した。
その言葉は
幼い二人には届いていない。
虚空に消え去る言葉のように
いっそ消え去りたいとさえ
アシュナスは思った。
「小さいあたしら可愛いね。」
ふとアシュナスの
傍らで声がした。
アシュナスは
声の主を見つめた。
そしてはっきりと
確かな声でその名を呼んだ。
「キアンディナ…!」
アシュナスの肩に
肘を置きながら
声の主は続けた。
「来ると思ってたよ。相棒。」
キアンディナは
アシュナスの目を見つめた。
そして
灯火のように笑った。